フグが「ミステリーサークル」を建設するロジックを解明する

 

 最近,海底の砂の上に直径2mもある円形幾何学模様の構造物(ミステリーサークル、写真左)をつくる奇妙なフグが奄美大島で発見されました。このフグは新種であることがわかり,アマミホシゾラフグ Torquigener albomaculosus (写真右)と名付けられました。我々がこれまでに行った潜水調査の結果,全長約10cmのオスがヒレで砂を掘りミステリーサークルをつくっていること,オスは自分のサークルへやって来たメスと中央部でペア産卵すること,産卵後オスは卵が孵化するまで単独で保護することなどがが明らかになりました(Kawase et al., 2013; 2015)。すなわち,このサークルはフグの繁殖のために必要な構造物なのです。

 では,フグはこの精巧なミステリーサークルを一体どのようにしてつくるのでしょうか?ミステリーサークルの直径はフグの全長の約20倍,谷の深さは体高の3倍以上あり,サークルをつくるときにフグは上方から全体の構造を見ることをしないので,どんなロジックで全体構造を調節しているのかがまったく謎のままです。

 フグプロジェクトでは,魚類生態学,理論生物学,ロボット工学など様々な分野の研究者が結集してこの謎解きに挑みます。

 

※この研究は,文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究(研究領域提案型)「生物の3D形態を構築するロジック」の公募班「フグが「ミステリーサークル」を建設するロジックを解明する」(平成28~29年度,平成30~31年度)として進められています。

 


「ミステリーサークル」の3Dモデルを公開

 ミステリーサークルの3Dモデルを公開しました(Kawase, Kitajima, Iwai 2022)

 一般の方にもご覧いただき易いように,公開した6つのミステリーサークルのうちの1つの3Dモデルを,sketchfabのwebページ上で閲覧・ダウンロードできます。これは,論文中の写真で紹介したK13の個体で,一般家庭用のパソコンやタブレットでも開いて閲覧しやすいように,さらにファイルサイズを小さくしています。このミステリーサークルの3Dモデルを回転させたり,ひっくり返したりして自由な角度から眺めてみて下さい。編集ソフトを使用すれば,3Dモデルを輪切りにしたり,断面を見たりすることもできます。その形を見て,何かに応用できないか想像してみて下さい.思わぬ大発見につながるかもしれませんよ!

提供:大阪大学大学院基礎工学研究科 岩井大輔准教授


 

 

アマミホシゾラフグ

Torquigener albomaculosus

 2014年に新種として記載された小型のフグ(全長約10cm)で,奄美大島周辺など限られた地域で確認されています。

ミステリーサークル

 全長わずか10cmのオスがいかにして直径2mもある精巧な幾何学模様をつくるのか,現在研究中です。

ミステリーサークルとダイバー

 ミステリーサークルはダイバーにも人気があります。水深15m以深で見られることが多い。